ゆる特許事務所

特許事務員による特許事務員のためのブログです。特許法をはじめ、特許事務に関わることをゆるゆると書いています。よろしくお願いいたします!

延長登録出願について

こんにちは。ゆる特許です。

 

今日は延長登録出願について書いてみます。

初めてこの言葉を知る人は、出願なの??登録なの??と耳慣れない感じがされると思います。

 

これは、登録後におこなう、特許期間を延長する手続きです。 

 

まず、みなさんご存知のとおり、「特許の存続期間は出願日から20年」ですね。しかし、お薬などの医薬品は、特許を取得した後でも本当に使っていいのか安全面等を検討し、承認がおりるまでにさらに時間がかかります。その間は特許を使って利益を得ることができないので、承認がおりるまでの空白の期間を保護しようという制度です。5年を上限として延長できます。こちらを「医薬品等の特許権の存続期間の延長」とよびます。

 

もともとこの制度は上記の目的のものでありましたが、法改正があり、審査に時間がかかりすぎた場合も利用できるようになりました。特許の存続期間は「出願日」から計算されるので、たしかに審査に時間がかかってしまうと、特許の権利を使える期間が短くなってしまいますね。こちらの法改正は、2020 年 3 月 10 日以後の特許出願に適用され、「期間補償のための特許権の存続期間の延長」とよびます。特許出願の日から起算して 5 年を経過した日又は出願審査の請求が あった日から起算して 3 年を経過した日のいずれか遅い日以後に登録された場合に適用できます。

 

特許法では67条2項に「医薬品等の特許権の存続期間の延長」、4項に「期間補償のための特許権の存続期間の延長」(法改正前は2項に書かれてありました)について書かれてあります。

 

(存続期間)

第六十七条

2 前項に規定する存続期間は、特許権の設定の登録が特許出願の日から起算して五年を経過した日又は出願審査の請求があつた日から起算して三年を経過した日のいずれか遅い日(以下「基準日」という。)以後にされたときは、延長登録の出願により延長することができる。

4 第一項に規定する存続期間(第二項の規定により延長されたときは、その延長の期間を加えたもの。第六十七条の五第三項ただし書、第六十八条の二及び第百七条第一項において同じ。)は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であつて当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があつたときは、五年を限度として、延長登録の出願により延長することができる。 

 

67条の2には、「期間補償のための特許権の存続期間の延長」について書かれてあります。

第六十七条の二 前条第二項の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。

一 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所

二 特許番号

三 延長を求める期間

四 特許出願の番号及び年月日

五 出願審査の請求があつた年月日

 

対して、「医薬品等の特許権の存続期間の延長」については、以前は67条の2に書かれていましたが、現在は67条の5に書かれています。

第六十七条の五 第六十七条第四項の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。

一 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所

二 特許番号

三 延長を求める期間(五年以下の期間に限る。)

四 第六十七条第四項の政令で定める処分の内容

 

なかなか難しい手続きですが、私も勉強していきたいです!

 

ではまた。ゆるゆる〜。

 

参考:

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/kijun_wg/document/13-shiryou/10.pdf

 

欧州特許出願と各国移行について

みなさま、こんにちは。ゆる特許です。

今日は欧州特許出願と各国移行について書いてみます。

 

日本の出願人が世界の特許を取得する流れとしては、日本の出願を基礎として、

  • まずはPCT出願し、その後各国移行する
  • パリルート経由で直接各国に出願する

のどちらかになります。(極端な話としては、日本の出願を基礎とせずにいきなりPCT出願したり、いきなり各国に出願することもできますが、あまり見かけませんね。)

 

「ヨーロッパの国の特許をほしい!」となった場合、「欧州特許出願」という制度があります。

欧州特許出願とは、欧州特許条約(EPC)に加盟している国の出願から登録までをまとめて手続きすることができる制度です。

 

まずは、欧州特許出願として審査をクリアします。無事に登録となったら、特許を取得したい国を指定することによって、各国の特許を取得することができます。

 

翻訳文は、欧州特許が付与されてから3か月以内に各国へ提出します。直接各国に提出するよりも時間をかせぐことができるというメリットもあります。

 

もちろん、取得したい国が決まっている場合や指定国が少ない場合は、PCT出願の指定国を決める段階で、「ドイツ」「フランス」など、各国を指定することもできます。

また、パリルートも同様に、日本の出願を基礎として、欧州出願をすることもできますし、いきなりドイツ出願、フランス出願をすることもできます。

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アメリカや中国など、他の国は登録査定が発送されたら、「無事に特許になる」と一安心するのに対して、欧州出願の場合は、特許事務としてまだまだ大事な手続きが残っているということですね。

 

ではまた!ゆるゆる〜。

翻訳文の提出について

みなさま、こんにちは!ゆる特許です。

 

さて、今日は、翻訳文の提出について書いてみたいと思います。海外の出願人が日本特許庁に対して手続きをする場合のお話です。

 

パリルートの外国語出願にしても、PCT国内移行の出願にしても、日本語の提出が必要になります。


まずはパリルートの外国語出願から見てみましょう。特許法第36条の2には以下のように書かれています。

 

第三十六条の二 特許を受けようとする者は、外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。

2 前項の規定により外国語書面及び外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年四月以内に外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、本文の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。 

4 通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。

5 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の第二項に規定する翻訳文の提出がなかつたときは、その特許出願は、同項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたものとみなす。

 

もちろん翻訳文の提出を忘れるなんてことは絶対に避けたいところですが、まとめてみると、

  •  明細書、請求の範囲の翻訳文が提出されなかった場合

   →その外国語書面出願 は取り下げられたものとみなされる。

    (現在は法改正により、特許庁が事前に通知を発行します。)

  •  図面の翻訳文が提出されなかった場合

   →図面が添付されていないこととして取り扱われる。

  •  要約書の翻訳文が提出されなかった場合

   →補正命令及び手続却下の対象となる。

となります。要約書以外は出願そのものがないものとみなされたり、図面がなかったものとみなされるので大問題になりますね。

  

一方で、 PCT国内移行の翻訳文についてですが、特許法には以下のようにあります。

第百八十四条の四 外国語でされた国際特許出願(以下「外国語特許出願」という。)の出願人は、条約第二条(xi)の優先日(以下「優先日」という。)から二年六月(以下「国内書面提出期間」という。)以内に、前条第一項に規定する国際出願日(以下「国際出願日」という。)における条約第三条(2)に規定する明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。以下この条において同じ。)及び要約の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、国内書面提出期間の満了前二月から満了の日までの間に次条第一項に規定する書面を提出した外国語特許出願(当該書面の提出の日以前に当該翻訳文を提出したものを除く。)にあつては、当該書面の提出の日から二月(以下「翻訳文提出特例期間」という。)以内に、当該翻訳文を提出することができる。
3 国内書面提出期間(第一項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間。以下この条において同じ。)内に第一項に規定する明細書の翻訳文及び前二項に規定する請求の範囲の翻訳文(以下「明細書等翻訳文」という。)の提出がなかつたときは、その国際特許出願は、取り下げられたものとみなす。

同様にまとめてみると、 

  • 明細書、請求の範囲の翻訳文が提出されなかった場合

   →その国際特許出願は取り下げられたものとみなされる。

  • 要約書の翻訳文が提出されなかった場合

   →補正命令の対象となる。

図面に関しては、翻訳する箇所がない場合は、図面の翻訳文の提出を省略することができます。その場合は、国際出願時の図面が国内移行後の図面として扱われます。

万が一、翻訳するべき箇所があるのに図面の翻訳文提出を省略してしまった場合は、後日、誤訳訂正書を提出することができます。(もちろん、通常はそのようなことはあるはずがないので、万が一のときは特許庁に確認してくださいね!)

 

ではまた!ゆるゆる〜。

 

参考: 

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/07_0100.pdf

https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tetuzuki/document/index/08_pp.pdf

外国の出願人の出願について

こんばんは。ゆる特許です。

 

「外国の出願人(在外者)が出願できるのか?」という点について書いてみたいと思います。

 

特許法には、第8条に書かれています。

 

(在外者の特許管理人) 

第八条 日本国内に住所又は居所(法人にあつては、営業所)を有しない者(以下「在外者」という。)は、政令で定める場合を除き、その者の特許に関する代理人であつて日本国内に住所又は居所を有するもの(以下「特許管理人」という。)によらなければ、手続をし、又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により行政庁がした処分を不服として訴えを提起することができない。

 

まず「在外者」を厳密に書くと、 「日本国内に住所を有しない者」ということです。政令で定める場合を除き」とありますが、下記にその特例が書かれています。

 

特許法施行令

(在外者の手続の特例)

第一条 特許法第八条第一項の政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。

一 特許管理人を有する在外者(法人にあつては、その代表者)が日本国に滞在している場合

二 在外者が特許出願(特許法第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、同法第四十六条第一項又は第二項の規定による出願の変更に係る特許出願及び同法第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願を除く。)その他経済産業省令で定める手続を自ら行う場合  

 

一方で、国際出願(PCT出願)の場合は、通常の日本出願と異なります。

 

国際出願は、その出願人が締約国の居住者又は国民である場合、当該締約国の国内官庁(受理官庁)に提出することができます(条約第9条、第10条)

 

つまり、日本国においては、国際出願の出願人に日本企業が含まれていれば、国際出願を日本国特許庁(受理官庁)にすることができます。

 

反対に、 出願人が外国企業のみの場合は、日本国特許庁を受理官庁とできないので、国際事務局かその国の受理官庁に出願しなくてはいけません。なお、国際事務局は、すべてのPCT加盟国の国民又は居住者からの国際出願を受理官庁として受け付けています。

 

また、代理人についての規則としては、

 

出願人がその居住者若しくは国民である締約国、又は2人以上の出願人がある場合には、これらの出願人のうちのいずれかがその居住者若しくは国民である締約国の国内官庁又はその締約国のために行動する国内官庁に対して業として手続をとる権能を有する者は、国際出願について、受理官庁としての国際事務局に対し業として手続をとる権能を有します(PCT規則83.1の2)

 

とあるとおり、外国の出願人のみの国際出願の場合、日本の代理人が代理権を持つことはできません。

 

ではまた!ゆるゆる〜。

 

参考:

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/document/syutugan_tetuzuki/02_01.pdf

https://www.wipo.int/pct/ja/filing/filing.html

PCT条約:

https://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/docs/pct.pdf

PCT規則:

https://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/texts/pdf/pct_regs.pdf

 

実用新案について

みなさま、こんにちは!

今日は、実用新案について書いてみたいと思います。

 

実用新案は、物品の構造や形状にかかる考案に限って保護します。

実用新案法第1条には以下のように書かれています。

第一条 この法律は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

 

つまり、「〜の方法」という発明は、実用新案の対象ではありません。クライアントから送られてきた出願書類の請求項が、

「〜の方法(英語だと"Method of〜 ")」

と書かれていたら、弁理士や技術者の方と相談しましょう。

 

それから、実用新案は審査請求がありません。出願するとすぐに方式的な審査があり、問題がなければ登録となります。特許の場合、登録となるまでに何年もかかりますが、実用新案はもっとスピーディーに登録となることができます。ただし、保護期間は出願から10年です。特許は出願から20年ですので、簡単に権利を取得できる分、期間は短いですね。

 

審査請求もなく出願してすぐに登録になりますので、出願する段階で登録料も一緒に払ってしまいます。納付する金額の内訳としては(2019年10月現在)、

  • 出願費用 14,000円
  • 登録費用(2,100円+請求項の数*100円)*3年分

を支払います。特許の場合、登録費用は特許査定が発送されて30日以内に納付しますので、全く異なりますね。

 

ちなみに、特許のような拒絶理由通知はありませんが、補正指令が出される場合があります。その際には、拒絶理由通知と同じように期限管理をして応答書を出すようにしましょう。

 

ではまた!ゆるゆる〜。

PPHとPCT-PPHについて

みなさま、こんにちは!ゆる特許です。

すっかり秋らしくなってきましたね。

 

今日はPPHについて書いてみたいと思います。 

 

PPHとは、特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway)のことで、ある発明を複数の国で特許にしたい場合、1つの国で特許になるとの判断が出された際に、その内容を他国に申請することで、他国でもスムーズに特許を取れるようにする制度です。

 

たとえば、日米間だと、米国で特許可能と判断されたら、米国の審査に関連する書類を日本に提出することによって、日本での権利化もスムーズに進めることができます。

 

私の勤めている特許事務所でも年々依頼が増えています。クライアントが希望する理由としては、早く権利化したいという理由が最も多いですが、審査をスムーズにすることで拒絶理由通知などにかかるコストをカットしたいという事情もあるようです。

 

日本特許庁には、早期審査に関する事情説明書にPPH申請書を添付して提出します。

PPH申請書には

  • 第1庁(先行庁)の全てのオフィスアクションの写しと、その翻訳文
  • 第1庁(先行庁)で特許可能と判断された請求項の写しと、その翻訳文
  • 引用文献
  • 請求項対応表

を添付することになっていますが、国によって省略可能とのことです。私も、請求項対応表以外は添付した記憶がありません。

 

(画像は特許庁ホームページより引用)

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それから、同じような制度で、PCT-PPHという制度があります。これはPCT出願時に国際調査機関が作成した見解書(ISR)などを利用して早期審査を行う制度です。

 

(画像は特許庁ホームページより引用)

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PCT-PPHは各国で特許可能との判断が出る前に利用できるので、より早く権利化したい時に効果を発揮してくれます。

 

ではまた!ゆるゆる〜。

 

参考:

特許審査ハイウェイについて | 経済産業省 特許庁

PCT出願の国際段階成果物を利用した特許審査ハイウェイについて | 経済産業省 特許庁

 

韓国の情報提供制度について

こんにちは!ゆる特許です。

お天気がよくない週末となりましたね。

 

さてさて、前回は情報提供について、前々回は韓国特許法についてお知らせしましたが、韓国の情報提供はどうなっているか調べてみました。

 

韓国で情報提供をするとなると、技術的な内容は弁理士や技術者の方が担当されますが、事務的な手続きは内外事務の方が担当されることになるかと思います。間に韓国代理人が入るかたちになりますね。

 

韓国の情報提供については、だれでも、出願継続中にいつでも、情報提供することができます。(第63条の2)

 

情報提供者はだれでも可能という点について、日本の異議申立のように、ダミーの名前を利用することができるそうですが、日本の情報提供のように匿名で提出することはできません。

 

また、情報提供されたことは、出願人には通知されないそうです。日本の場合は、出願人に「通知書」が発送されますね。

 

反対に、情報提供者側には、拒絶決定や特許決定の結果が通知されるそうです。これは日本にはない制度ですね。情報提供者が自分から情報を取りにいけばとれますが、特許庁から教えてくれるということはありません。

 

韓国と日本で微妙に制度が異なりますので、担当をされることになったらポイントを押さえておくといいですね。

 

ではまた!ゆるゆる〜。

 

参考:

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/16901/