情報提供について
こんにちは!ゆる特許です。
今日は、情報提供について書いてみようと思います。
以前、異議申立をご紹介したことがありましたが、異議申立は特許後に「この発明が特許になるのはおかしい」と訴えるのに対し、情報提供は、出願後に、いつでも、だれでも行うことができます。目的としては異議申立と同じで、特許になることを阻止するための手続きです。
ライバル会社がおなじような研究について出願したことかどうかは、その出願が公開されたときにわかりますが、「特許をとられるとまずいぞ」となった際に、情報提供を行います。過去に似たような出願があることを特許庁に知らせて、新規性や進歩性を満たしていないことを訴えて特許になることを阻止します。
ところで、情報提供をする側も、似たような研究をしていることがばれてしまうので、その出願を見張っていることを出願人側には知られたくありませんね。そこで、情報提供は匿名で手続きすることができます。
匿名とは何やら、告げ口しているような感じがしますが。。。
私個人的には、匿名で手続なんて、影でコソコソしている感じがたまらないですけどね(笑)
具体的な手続についてですが、書類としては、「刊行物等提出書」を提出します。刊行物等提出書内に記載する参考文献の添付は省略することができます。
書類例(特許庁より):
匿名にしたい場合は、提出者の箇所に「匿名」と記載します。オンラインで提出する際にも、同じように「匿名」と書くことで代理人名やクライアント名を伏せることができます。
オンライン手続においてPDFまたはJPEGイメージを添付する場合、ファイルのプロパティなどに作成者情報が設定されている場合がありますので、匿名を希望される場合は御注意ください。
と書いてありますが、ファイルのプロパティの情報を必ず確認しましょう。
ここが事務員の腕の見せ所ですよ(笑) このあたりの細かいところは事務員に任せている事務所が多いはずです。これに気がつかず提出してしまうと、刊行物等提出書を「匿名」で提出してもすべてが台無しです。。。
ちなみに、反対の立場として、情報提供を受けてしまった場合(つまり出願人側の場合)は、特許庁から「刊行物等提出書が提出されました」と書かれた通知書が届くことで知ることができます。事務所によって対応は異なると思いますが、この通知書そのものに回答する義務はありませんので、クライアントに連絡して判断を仰ぐような形になるでしょう。
ではまた!ゆるゆる〜。
参考情報:
韓国特許法について
みなさま、こんにちは。ゆる特許です。
ついに入りましたね、10連休。いかがお過ごしでしょうか。
今日は、韓国特許法について書いてみます。
特許を取得するまでの主な流れとしては、日本とほぼ同じです。
まず出願についてですが、日本企業が韓国の特許を取得しようとする際には、PCT国内移行やパリルートを利用することがほとんどだと思います。
韓国では、
PCT国内移行の場合、
- 国内書面の提出期限は、優先日から31月(日本の場合は30月)
- 翻訳文提出期限は、国内書面提出日から1月(日本の場合は2月)
パリルートの場合、
- 外国語出願は、英語のみ可能(日本の場合はすべての言語が可能)
- 翻訳文提出期限は、優先日から1年2月(日本の場合は1年4月)
です。
また、審査請求期限は、出願日(国際出願日)から3年です。日本と同じですね。
さらに、拒絶理由通知への応答期間は、2月(4月までは延長可能)です。在外人も同じです。
韓国で拒絶理由通知が発送された場合、そのまま送られてきても読めませんから、日本語訳をつけて送るように依頼することが多いです。その場合、翻訳に時間がかかると、日本の事務所に送られてきたときには、すでに応答期限まであまり時間が残っていないことが多いです。速やかにクライアントに送付することが大切ですね。
ではまた!ゆるゆる〜。
審決取消訴訟について
こんにちは!ゆる特許です。
卒業シーズン、桜も咲いて春らしくなってきましたね!
今日は、拒絶審決を受け取った後の話を書いてみたいと思います。
拒絶審決を受け取った後は裁判をするしかないため、特許をとることをあきらめる出願人がほとんどです。ですので、特許事務の方も、拒絶審決後の手続きを担当したことがある方は少ないかもしれませんね。
特許法では178条と179条に書かれています。
訴えを起こす先は東京高等裁判所の専属管轄、特許庁長官を被告とする、と書かれています。
特許法178条3〜5項には提出期限について書かれています。実際に訴状を提出する場合には、事前に、期限について裁判所に確認する方がいいかもしれません。
(審決等に対する訴え)
第百七十八条 取消決定又は審決に対する訴え及び特許異議申立書、審判若しくは再審の請求書又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄とする。
2 前項の訴えは、当事者、参加人又は当該特許異議の申立てについての審理、審判若しくは再審に参加を申請してその申請を拒否された者に限り、提起することができる。
3 第一項の訴えは、審決又は決定の謄本の送達があつた日から三十日を経過した後は、提起することができない。
4 前項の期間は、不変期間とする。
5 審判長は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、職権で、前項の不変期間については附加期間を定めることができる。
6 審判を請求することができる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ、提起することができない。
(被告適格)
第百七十九条 前条第一項の訴えにおいては、特許庁長官を被告としなければならない。ただし、特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する第百七十一条第一項の再審の審決に対するものにあつては、その審判又は再審の請求人又は被請求人を被告としなければならない。
裁判を起こす場合は、知的財産高等裁判所に「訴状」を提出します。
訴状のイメージです(知財高裁HPより):
提出物は以下のとおりです。
参考:http://www.ip.courts.go.jp/tetuduki/sojyo/index.html
- 訴状
正本:1部
副本:被告の数の部数
写し:3部(特許,実用新案) 2部(商標,意匠)
- 審決謄本写し 訴状の正本・副本・写しの合計と同じ部数
- 訴訟委任状
- 法人資格証明書
- 収入印紙
- 郵便費用
正本には表紙に「正本」と書き、代理人の印を押します。
副本は表紙に「副本」と書くことだけが異なり、正本と同じように代理人の印を押します。特許庁長官が被告なので1部用意します。
写しとは正本のコピーになります。白黒のコピーでOKです。
資格証明書とは、その法人が「裁判をおこす資格をもつ法人である」ことを証明するために提出します。法務局ホームページより取り寄せることができます。在外人の場合には、「委任状にサインをした人がその法人の代表者であることを証明する」と記載された書類に対して、公証人がサインをしたものを提出します。
訴状は郵送も可能ですが、裁判が始まる大切な書類ですので、都内の方は直接持参する方がいいです。事務局の方が書誌的な内容をチェックしてくださいます。
訴状が受理されると、裁判所から被告である特許庁あてに副本が送られ、裁判がスタートします。
知的財産高等裁判所 | 審決取消訴訟(特許・実用新案)の進行について
初めて担当する場合でも裁判所から送られてくる書類をよく読みながら進めればいいので問題ありません。ただ、特許庁に対する手続きとは、感触が異なると思います。例えば、期限についても、弁理士と裁判所で話し合いながら決まることが多いです。裁判所から「いつごろなら提出できますか?」と聞かれたりします!
もしチャレンジできる機会があればぜひ担当してみてください。特許事務としての幅が広がって、おもしろいと思います!
ではまた!ゆるゆる〜。
審査請求料、特許料の減免制度について
こんばんは!ゆる特許です。
特許事務員のみなさんに朗報です!
なんと、審査請求料、特許料の減免制度の手続きが大幅に簡略化されるそうです!
やった〜(笑)
新たな特許料等の減免制度が始まります(審査請求料・特許料(第1年分~第10年分)) | 経済産業省 特許庁
今までは、審査請求書や特許料納付書とは別に、軽減申請書と証明書を提出する必要がありました。証明書については、クライアントに株主名簿や登記簿を用意していただく必要がありましたし、特許事務側でも、それらの書類を特許庁に提出する場合と経済産業局に提出する場合があり、なにかと確認が必要な手続きでした。
この制度は在外人(外国の出願人)にも適用されますが、在外人向けに細かい規則がなく、「日本の書類に適するような書類」を提出してもらうことになっているため、必要な書類についてクライアントになかなか伝わらず、何度もやりとりを往復させたことがありました。
新制度では、まず、軽減申請書や証明書を提出する必要がなくなり、審査請求書や特許料納付書に、それぞれ【手数料に関する特記事項】や【特許料等に関する特記事項】を記載するだけになります。
また、新制度と旧制度のどちらを適用するかについては、審査請求日が施行日(2019年4月1日)の前か後かで判断するそうです。
*画像は特許庁HPより抜粋
それにしても、この複雑な手続きがどうして簡素化されたのか、いろいろ調べてみましたが、はっきりとは書いてあるのは見つけられませんでした…
審査請求料が同日付で値上がりするので、その対応策のような感じでしょうか。(アメとムチ??)
出願審査請求料改正のお知らせ(2019年4月1日施行) | 経済産業省 特許庁
簡素化されて利用しやすくなると、対象の出願人にとっては、より積極的に特許をとりにいけるのでいいですね!特許事務員にとってもありがたい話です。
ではまた!ゆるゆる〜。
分割出願の審査請求について
こんにちは!ゆる特許です。
今日は、分割出願の審査請求について書いてみます。
そもそも、審査請求は出願から3年が期限となっていることは以前にお伝えしました。
特許事務の経験がある方は、分割出願の審査請求期限は「30日」と覚えてらっしゃる方が多いです。それはどのような仕組みでしょうか?
審査請求について書かれてある特許法48条の3をみてみましょう。
第四十八条の三 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
2 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
分割出願は第2項の
「第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願」
にあたります。第2項は第1項の例外として書かれていますね。
つまり、分割出願の審査請求期限であっても、
- 基本的に出願日から3年
- ただし、その期限をすぎている場合は、分割出願を庁提出した日から30日
となります。
分割出願の出願日は、分割出願を提出した日ではなく、親出願の出願日と同日とみなされます。ですので、ほとんどの分割出願の場合、親出願の審査請求期限はとっくにすぎているので、第2項の例外としての「分割出願を庁提出した日から30日」が適用されるのです。
まれにですが、出願をしてからすぐに分割出願をする場合があります。その場合は、第2項の例外が適用されず、第1項に書かれている「出願から3年」、つまり、親出願の審査請求期限と同日となります。
どの事務所さんもデータベースで審査請求期限を管理していると思うので、期限管理を間違うことはないと思いますが、今回の仕組みを知らない方も意外に多いので、勉強になれば幸いです。
ではまた!ゆるゆる〜。
分割出願の出願人と発明者について
こんばんは!ゆる特許です。
今日は、分割出願の出願人と発明者について書いてみます。
まず出願人についてですが、前回お知らせしたとおり、分割出願は特許法第44条に記載がありますが、その第1項に下記のように書いてあります。
第四十四条 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
つまり、「特許出願人は、......新たな特許出願とすることができる。」と規定されており、原出願の出願人と分割出願の出願人は、一致していなければいけません。出願人以外は分割出願できない、ということですね。
参考:https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shinsa/pdf/bunkatu_kizyun/01.pdf
次に発明者についてですが、基本的には親出願と同じである必要がありますが、名前が変わったり、人数が変わったりすることは認めているとのことです。その場合は、願書の一番下部分に【その他】欄を設けて、変更された旨を記入するようにしましょう。
分割出願の発明者は原出願と同一を原則としますが、婚姻等による氏名の変更や発明内容の分割により発明者も分離するような場合は、上申書又は分割出願の願書の【その他】の欄 に変更されている理由を記載してください。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syutugan_tetuzuki/00_00all.pdf 723ページ
分割出願に係る発明者については、方式審査において、分割出願ともとの出願の発明者の同一性を確認しています。ただし、出願の分割に係る新たな出願については、もとの出願の発明者のうちの一部の者のみが発明者であることも想定され得るため、当該一 部の発明者のみを分割出願の発明者とすることも可能です。その場合、分割出願又は変更出願の願書には、当該分割又は変更出願に係る発明者のみを記載し、併せて、【その他】の欄を設け、その旨を記載してください。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/binran_mokuji/00_11.pdf 13ページ
ちなみに、この分割出願に関しては、特許の世界では家族にたとえて、親(元となる原出願)、子(分割出願)、孫(分割出願のさらに分割出願)…なんて呼び方をしたりします(笑)おもしろいですね〜。
ではまた!ゆるゆる〜。
分割出願ができる時期について
こんにちは。ゆる特許です!
今日は、分割出願ができる時期について書いてみます。
分割出願は特許法第44条に記載があります。
第四十四条 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。
二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。
まとめると、
- 出願をしてから、最初の拒絶理由通知が発送されるまで
- 拒絶理由通知の応答期間内
- 拒絶査定が発送されてから3ヶ月以内(在外人は4ヶ月)
- 特許査定が発送されてから30日以内(納付期限まで)
となります。
分割出願はいつでもできるわけではないのですね!
図では、赤線の部分です。
拒絶理由通知は複数発送される場合がありますが、それぞれの応答期間内は分割出願できます。
特許査定時に関しては、例外として、前置特許の場合は分割出願ができません。前置特許とは、拒絶査定後に再度審査段階(前置審査)に戻った上で特許査定となることです。「拒絶査定時など、特許査定に至るまでに分割出願をする機会は十分ありましたよね?だから特許査定時には再度の機会はあたえませんよ」という考えのもと、分割出願できないのです。
それから、登録されてしまうと分割出願はできません。特許料を納付して1週間しないうちに登録されますので、もし、特許料納付した後に分割出願の指示があった場合には、まずは登録されていないか特許庁に確認しましょう。納付した後でも、特許査定が発送されてから30日以内であり、まだ登録されていなければ、分割出願をすることができます。
分割出願ができる時期を理解して、クライアントから「分割したい」という要望があった時には説明できるようにしておきたいですね!
ではまた。ゆるゆる〜。